トヨタ プリウス(初代) 試乗記 
トヨタから世界発の量産型ハイブリッドカー、初代プリウスが登場したのが1997年12月。低速時には電気によるモーター駆動にて、高速走行時はガソリンを使用し、モーター電源を充電しながら走るという、電気とガソリンの両刀使いで、高出力&低燃費&低公害を実現している。他社もプリウスに対抗して、ホンダのインサイトやシビックハイブリッド、日産のティーノハイブリッド(300台程の限定生産で終了)の市販や、三菱も市販はないがGDIハイブリッドの技術等でトヨタに続き、トヨタもエスティマ、アルファード等のミニバンや、クラウンみたいなサルーンにもハイブリッドのモデルを出すなど、自動車業界の生き残りをかけて必死である。しかしながら、プリウスのインパクトにはかなわない。

初代プリウスが人気モデルとなったのはハイブリッドシステムだけではない。近未来的なフォルムに、大人4人がゆったり乗れる広い室内、豪華な内装(メーター類を中央に配置したのもプリウスが初)等。そして、4275×1695×1490(全長×全幅×全高)の5ナンバーサイズは手頃で取り回しもよく、運転もしやすかった。システムが特殊でコストがかかっていながら、国からの補助により車体価格が220万円で買えたのも魅力の一つであった。
 
1998年9月〜1999年1月、神戸市西区の西神南に一時期営業していた、有料試乗施設「Ride One」でプリウスを試乗する機会があったので、簡単な感想を述べる。
sp002_001.jpg sp002_002.jpg
時間は30分で500円。一般道をメインに、一部高速道路(第二神明北線の長坂〜学園南間 わずか1km、短いなぁ〜)を走り、ハイブリッドを満喫しました。エンジンをかけると、エンジンの音がしない。至って静かである。そして発進、「キュイーン」という音と共に静かにはしり、聞こえるのはロードノイズのみ。まるで電車のよう。そしてある程度加速すると、エンジンがかかり力強く走る。エンジンはカローラに積まれている1NZ-FXEの1500ccだが、モーターアシストにより実質はマークUの2500cc並の走行性能となる。それでいてガソリンの使用量が少ない分、燃費もよい。燃費の良し悪しは試乗段階ではわからないが、知り合いの話では、平均燃費17.4km/g、良い時で20km/gを超える時もあるという。
センターメーターは運転中の視線移動が少なく、結構見やすい事はビスタを運転した時に実証済みである。運転席側にあるはずのメーター類が本来の場所にないというのは抵抗があるという人も一部いるが、そんな事を気にしなければ、何の問題もない。新しいコンセプトの車種には積極的にセンターメーターを取り入れている一方、カローラ等の従来からの量販車種に採用しないのは、コストの問題か、それとも固定ユーザーが抵抗を感じるという点で採用できないといった所か。結構見やすいんだが…。
トランスミッションは、電子制御式の無段変速で、スクーターみたいなもの。バックする時はガソリン駆動を使用せず、モーターを逆接続する事で反対向きに進むという仕組みであるが、一般的に運転する場合は気にする事ではないかもしれない。ミッションもAT化が進み、運転が楽になる一方、MTによる操る楽しみがなくなるというのも寂しい気がする。これも時代の流れかも知れない。
 
ハイブリッドシステムは、ガソリンが将来枯渇する為の代替燃料として電気自動車の開発が進められる中、まだまだコストや燃料供給場所の問題で電気自動車への移行が進まない為のいわゆる「つなぎ」的存在と言われている。燃費という面だけで見れば軽四やリッターカーの方が勝るという考えもあり、必ずしもハイブリッドがいい…という訳でもなく、現在でも「珍しいクルマ」という域を出ていない。しかしながら、いずれガソリンがなくなれば、ハイブリッドを通り越して「電気自動車」が当たり前という時代は来るであろう。プリウスは、その第一歩を踏み出したと言えよう。そして、プリウスのデビューから6年、2003年9月には新型が登場している。先代に比べてサイズが大きく(幅が3ナンバー枠を超えた)なり、形も従来の3boxセダンから、5ドアハッチバックになり、大幅なイメチェンとなっている。燃費性能も上がっているとの事だが、果たしてこのモデルチェンジが吉と出るか、凶と出るか…。