列車行先〜阪急電車〜
阪急電車の行先方向幕採用は昭和50年に登場した2200系(6000系のプロトタイプ的存在で、電機子チョッパやVVVF制御の試験車両。現在は6000系に編入)や6300系に始まり、正面/側面共に種別と行先が個別に分かれているのが特徴である。それ以前の車両は正面に方向板、側面に蛍光管タイプの種別表示灯(優等列車のみ表示)が主流で、一部の京都線-大阪市営地下鉄堺筋線乗り入れ運用には手巻き式の方向幕も装備されていたものもあった(地下鉄乗り入れ以外の運用には非対応、方向板を使用)。昭和60年以降になると5000系、5100系、5300系、3000系、3100系、3300系、2300系の本線運用を中心に電動方向幕取り付け改造が行われたが、側面のみ種別と行先が一体化した方向幕になっているのが6000系以降の仕様との違いである。平成7年登場の8200系でLED表示器が採用されるも、6000系以来の幕式スタイルを維持し続けていたが、平成18年登場の9000系でフルカラーLEDを採用、新車への置き換えや在来車への改造など、普及が注目される。
正面/側面方向幕表示器 個別表示(6000系列/7000系列/8000系列/9300系)
見本
6000系以降は新製時より正面/側面に電動方向幕が装備される。いずれも種別と行先が個別窓で、窓数が多くなってコストアップというネックはあっても、種別と行先で臨機応変に対応できるという利点を持ち、後に南海電車や神戸電鉄でも採用されている。幕の内容更新、デザイン変更(英文字併記、大文字から小文字へ変更等)は約10年サイクルで行われるのが基本だが、近年ではダイヤ改正で種別変更が著しく、3〜5年での交換が目安となっている。
 8000系の後期より正面方向幕が拡大化、在来車にも改造の上適用(6000系の車体更新で一時期拡大化されたが後にコストダウンにより適用中止、5300系未装備車への改造取り付けには適用)されている。 
方向幕写真(クリックすると写真が表示されます。)
・種別表示、通常縦幅タイプ
 
・正面種別表示、拡大縦幅タイプ
 
・行先表示、通常縦幅タイプ
・正面行先表示、
拡大縦幅タイプ
側面方向幕表示器 一体型(5000系列、3000系列/2300系)
見本
昭和60年以降になると、従来方向幕がなかった5000系列以前の形式にも取付改造が行われる。正面は6000系以降と同タイプであるものの、側面は従来の種別表示灯のスペースをそのまま流用した都合上、種別と行先が一体になった方向幕が登場した。1つの幕に種別と行先のスペースが均等に表示されるのが他社との違い。但し、文字数の多い種別や行先により表示スペースをずらしたり、文字を縦長にして詰め込むなど苦労の跡が見られる。種別と行先が個別の6000系以降タイプに比べると種別と行先の組み合わせに制限が出てしまう欠点がある。
 旧型車両中心の同タイプだが、方向幕未装備車が支線で残っていたり、5000系などが新車並にリニューアルしている関係上、あと10年〜20年は安泰である。
方向幕写真(クリックすると写真が表示されます。)
 
番外編
  阪神大震災で伊丹線車両が被災した事から、3000系8両編成(4両×2)を各4両にバラして補充した。
 その車両は神戸本線用で方向幕が装備されていたが、中間に組み込まれた先頭車については未装備の
 ままだった。その為、バラした後の4連1本については正面方向幕無しの為に方向板使用、側面は方向
 幕付きという異端児となってしまい、伊丹線専用という事で「塚口-伊丹」の固定幕が入れられた。
 指令器がない為に(中身を差し替えない限り)この表示しかできない。
側面LED表示器 8200系タイプ
見本
8200系はラッシュ時の座席収納車という性格上、側窓を大きくとった(通常は扉間3枚に対して2枚に減らして、拡大)為、行先表示器の縦幅が狭く横幅が長くなった。従来の規格外サイズになった事から、試験的にLED表示になっている。表示窓は2枚並べられるが、日本語用と英字用に分けられ、それぞれ種別と行先が一体(5000系風)に表示されるのが特徴。8200系そのものが特殊な存在である事、3色LEDでは種別の多い阪急では使いづらい事から普及せず、9000系のフルカラーLED登場までは幕式が主流な状況は変わらずだった。 
方向幕写真(クリックすると写真が表示されます。)
 通勤急行┃梅田
正面/側面フルカラーLED表示器 個別表示(9000系)
見た目は方向幕と大差ない為、見本省略
平成18年登場の9000系より、フルカラーLEDの行先表示器が登場。種別表示はフルカラーの性能を生かし、様々な種別色を方向幕並に表現する事が可能である。一方行先表示は白色LEDとの事。1色で十分な為のコスト削減によるものとの事だが、かつて誤乗防止の為に宝塚南口行きを青幕にしたような事例もある事から、3色程は欲しい所である。かと言って、今更旧来の3色LED(赤橙緑)では見難いというのもあるかもしれない。予算が合えば、新車製造や改造取り付けにより一斉に普及するかもしれない。
方向幕写真(クリックすると写真が表示されます。)
 
正面方向板
昭和50年代までは主流だった正面方向板、昭和60年代になると方向幕取り付け改造が行われ、本線系統では全車方向幕化。支線系統で残るのみとなったが、支線用車両の老朽化により本線から方向幕装備車への置き換えが一部で行われ、決して安泰とはいえない。
側面種別表示灯(蛍光管タイプ)
正面方向板とセットで、側面には種別表示灯が設置される。当時、他社ではサボが使用されていた事を思えば画期的な装置だったと思う。表示窓スペースの都合で3種類(特急┃急行┃準急)しか表示されず、普通運用時は無表示だった。方向幕設置が進むと(特に京都線では)普通車専用、あるいは支線専用となり、表示灯の使用機会がどんどんなくなり無表示がおおくなっていた。京都線の快速列車登場により方向幕無しの2300系が使用される事から、内容を「急行┃快速┃普通」 に変更した上で再使用された時期もあったが、快速運転の廃止、方向幕設置や老朽廃車により現存しない。一方、今津線(今津北線)では内容を「西宮北口-宝塚」に変更して使用されている。
側面種別表示灯(蛍光管タイプ)
見本
大阪市営地下鉄堺筋線に乗り入れる京都線3300系、5300系には、正面に手巻き式方向幕装置が取り付けられていた。本来ならこれが阪急初の方向幕となるのだが、地下鉄乗り入れ関連、及び河原町〜動物園前(後に天下茶屋)間の堺筋急行に使用が限定されており、本線や北千里方面への使用は方向板を使用していた。(という事情から、ここでは方向幕第1弾を2200系・6000系・6300系とした。)英字なし、急行の表示が方向幕設置当初そのままの白幕に赤文字を長期間保っており異色を放っていたが、天下茶屋延伸時に初めて幕交換が行われ、急行表示色変更(橙幕に黒文字)、英字の併記(当時は大文字)となった。電動方向幕設置により3300系からは早々に姿を消し、5300系の6+2両系統に長い間残っていたが、こちらも平成18年現在には全車電動方向幕化改造されて現存しない。
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